ノックの音と同時に、王輝の声が響く。



「えぇ。どうぞ」



ドアを開けると、携帯電話を持ったままの宝子さんが、けだるそうに立っていらっしゃいました。



「お好きな場所にお座り下さい」


「あぁ。じゃあイスでもいいか?」



そう言いながら、王輝が所謂“勉強机”のような、白い机の傍に備え付けられた椅子に手をかける。


薄いピンクのイスは、王輝には少しアンバランスにも感じられた。



「亜須賀さんも、立ってないで座ったら?」



何だか、いつもの宝子さんと様子が違いませんこと……?


そう感じながらも、姫羅はベッドに座った。



「去年はクラスも違ったし……、こんな風にちゃんと話すのは初めてだよな。
まずは、自己紹介でもどう?」


「自己紹介、ですか? では、あたくしから……」



姫羅は、すっと姿勢を正した。



「あたくし、亜須賀姫羅と申します。姫羅と呼んで下さって構いません。
部活には特に所属していませんが、一般的なスポーツであれば大体できると思います。
そうですね。パソコンなどの機械は苦手ですが、料理などの家事なら一通り習っておりますし、必要な時はおっしゃって下さい」



そこまで言ってから、姫羅は軽く頭を下げた。