「あ、あの。僕、少し電話をしたいのですが……」



私が部屋を出た後、立ち尽くす姫羅に王輝が声をかけた。



彼の指した方向には、王輝の部屋だと紹介したドアがある。


部屋に入って、静かに話がしたいということなのだろう。


姫羅が頷いたのに合わせて、2人はそれぞれの部屋にわかれた。



「何だか、可愛らしいお部屋ですわね……」



入口を入ってすぐ右が、王輝。

入って左が、姫羅。



配置された家具の位置などに違いはないものの、その内装には大きな差がある。



ガラステーブルを中心に、黒や青を基調にした家具を配置した王輝の部屋は

どこかのモデルルームのような、シンプルな作り。



だが姫羅の部屋は、丸いガラステーブルをはじめ、ピンクや白などの可愛らしい家具で統一されている。


……乙戯花氏も、もっと別のところに力を入れてほしいものである。



「特にすることもありませんわね……」



何気なくそう呟いてから、王輝が戻るまで、姫羅は部屋の中を丁寧に見て回った。



「亜須賀さん、入るぞ」