専用ルームを出てから、私たちは静かに歩き続けた。
ほとんどの生徒が帰宅した今、廊下に響くのは私たちの足音だけ。
長い廊下の突き当たりで足を止めた私に合わせて、王輝と姫羅も立ち止った。
「こちらです」
目の前の扉を軽く指して、にっこりと微笑む。
ゴールドのきらびやかな飾りの付いた、真っ白な大きな扉。
おそらく、この2人も初めて目にする物だろう。
「このようなお部屋、この学園にありました?」
「以前は資料室として使用していたお部屋です。
この度、乙戯花氏の命によって扉や内装を大幅に改装致しました」
「か、改装……です、か?」
淡々と語る私とは対照的に、王輝が驚いた表情で声を上げる。
「はい。ここはご自宅だと思って下さって構いません。お2人でご自由にお使いください。
……乙戯花氏からの、ささやかなプレゼントです」
もう一度微笑んでから、私は扉に手をかけた。
大袈裟にぎぎっと音を立てた扉の感触に、思わず笑みがこぼれそうになる。
「な、何ですの? これは……」