7月15日。



吉野と来たのは
大学病院。



待合室に二人並んですわる。



「ここには、僕が尊敬する
先生がいるから……
一度、先生にちゃんと見てもらいましょう。」



「3日。」



「えっ………?」



「3日、たてば分かる。
そう言ったよね…。」



私は、前を見つめて吉野に言った。




膝の上で、拳を握りしめる吉野。




多くの人が、訪れる病院の中で
私と吉野のまわりだけ
音のない静かな空間が広がった気がするーー




しばらくして、名前をよばれる……




中にはいると、白髪の先生。



「こんにちは。」



その先生に、私はペコリと頭を下げた。



吉野にいろいろ聞いていたらしい先生は
これから、どんな検査をするのかを
説明した……。



CT による脳の検査、脳波の測定
機能検査などをとり
私に異常がないか、調べるらしい……



「いい機会なので、
詳しく調べて見ましょう。」



白髪の先生は、笑顔でそう言った。



先生は、私の顔を見たあと
吉野の顔を見て、うなずいた。



検査には、4日かかるらしい……



私は、淡々とそれをこなした。



最終的に結果が出たのは
修了式の当日だった。



その日は、父親もよばれた。



吉野と父は、中に呼ばれ
私は、待合室で待っていた。



しばらくすると、二人は笑顔で出てきた……



父さんは、



「異常は、なかった。
ただ、お前は人より頭がいいらしい……」



そう、つぶやいた……



その言葉を聞いて、私は
先ほどまで吉野と父がいた
診察室のドアをあけて中に入る。



驚き顔の白髪の先生。



二人の助手が側にいた……



「脳の画像を見せて下さい……。」



白髪の先生は、戸惑ったような顔をしたが
パソコンのマウスを動かし
画像を見せてくれた。



「脳には、異常はなかったよ。」



と先生は言ったけど……、
私は、食い入るようにその画像を見た。



…………やっぱり。



私は、確信した。



食い入るようにみる私に
白髪の先生は



「君は、とても頭がいい。
その頭があれば将来、私のように
偉い先生になれるよ。」



と、言った。



私は、ゆっくりと先生の方へと
顔を向けて



「私は、あなたのように
なりたくは、ありません。」



まっすぐに、その目を見て言った……



オロオロする助手達。




私は、先生の後ろに並べられた
さまざまな医学書の中から
数冊の本を取り、全ての本のあるページを
開いて、見せた……



「私の病名は、コレです。」



と、言い捨てその場を立ち去った……