魁の視線の先に気づいたのか、ゆっくりと振り返ったマリアがこっちを見て顔を強張らせた。

あぁ…兄さんの顔を見て、マリアが青褪めていくのがわかる。


「あの…マーク兄さん? これは、えーっと……」


兄さんに話し掛けようと口を開いたが、何て声を掛けたらいいのかわからないのだろう……言葉が続かず固まってしまっていた。

そんなマリアの様子に気づいた兄さんは


「……わかっているから、そんな顔するんじゃない」


安心させるように目線を合わせると、苦笑いで優しく頭を撫でる。


「え……?」


怒りが収まったのが予想外だったのか、大きな瞳を瞬かせて兄さんを見ているマリア。


「全く……ギリギリで間に合うとはな」


深い溜め息を吐いてから、視線を移した兄さんは


「これで、文句はありませんよね?」


「───仕方が無いから、認めてやる」


にこりと笑顔で首を傾げる魁に、渋々了承した。

それが余程、悔しかったのか……

舌打ちも忘れない兄さんだった。