大祭壇の前では、司教様のありがたいお説教が続いていたけれど、最早、それどころじゃなくて。

私の薬指に嵌る指輪に鋭い視線を向けていたマーク兄さんに、何を言われるのかとビクビクしていれば


「……わかっているから、そんな顔するんじゃない」


マーク兄さんの口からは、予想外の言葉が。


「え……?」


わかってるって、何が?

マーク兄さんを見上げれば、さっきまでの凍てつくようなオーラは消えていて。

放心状態の私の顔を覗き込むと、苦笑いで頭を撫でられた。


「全く……ギリギリで間に合うとはな」


深い溜め息を吐いてから、私に向けていた視線を上に移したマーク兄さんは


「これで、文句はありませんよね?」


「───仕方が無いから、認めてやる」


にこりと笑顔で答える魁さんの言葉に、苦虫を噛み潰したような顔をして低く呟いた。

言葉の後に聞こえた舌打ちらしきものは、気のせいだよね?