「やっぱり、いい度胸してるよ……」
にこやかに微笑み合う二人を見ていたアル兄さんが、ポツリと呟いた。
「え?」
意味がわからなくて聞き返したけれど
「いや、何でもない……」
苦笑いを浮かべたアル兄さんの顔は引き攣っていて。
「…………?」
何だろう?
アル兄さんの表情が気になって、その視線を追いかけていけば、私を見下ろしている魁さんと視線が交わった。
「どうした?」
「あ、いえ……」
言葉と共に零れる二人の白い吐息が視界を遮って、魁さんとの間には数秒間の薄い壁が作られる。
「行くぞ。クリスマスキャロル聴くんだろ?」
「はい」
相変わらず優しく落ちてくる魁さんの声に答えれば、抱きしめていた腕を私の腰へと添えて笑顔のマーク兄さんの所まで歩いて行く。
まさか、イブにクリスマスキャロルを魁さんと聴けるなんて。
「マーク兄さん、ありがとう」
嬉しくてお礼を言えば、ピクリと反応したマーク兄さんの片眉。
「……マリアが喜んでくれるなら、それでいい」
一瞬、魁さんを見てから私に視線を落とすと、優しく微笑んで頭を撫でられた。

