Wonderful DaysⅡ



こんな時、私が習った護身術なんて全く役に立たない。

私が習ったのは、実践型の護身術で。

先ずは落ち着いて、呼吸を整えるのが基本。

この呼吸法が出来なければ、技を繰り出す事も相手からの攻撃を避ける事も出来ない。

ロシア軍隊の格闘術道場で屈強な軍人さんにみっちり仕込まれた私は、暴走族の男達を見ても怖いとは思わなかったから反撃も出来たけれど……

精神的に恐怖を植え込まれている、先輩やお婆様を前にしては呼吸が乱れて、体が動けなくなるだけだった。


“叩かれる”


そう思って唇を噛み締めた瞬間、掴まれた左腕を引き寄せられて、力強く何かに包まれた。


「……っ!? 何ですか、貴方は!!」


真っ暗な視界の中、今度はお婆様の緊迫したような声が耳に届く。


状況を確認しようと身を捩ろうとした時、遅れて香ってきた匂いに心臓が痛いほどに反応する。


「───何してる」