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深夜の公園はひっそりと、静まり返っていた。
聞こえてくるのは、自分と数人分の雪を踏みしめる音だけ。
普段、暗闇に包まれているその場所は雪明りで幻想的な景色を浮かび上がらせ、公園に立つネルソン・マンデラの像には降り続ける雪が積もっていた。
それを横目に奥へと進んで足を止める。
「はぁ……」
心を落ち着けようと、一度深呼吸をするけれど……
落ち着かせるはずの心は、益々ざわついていく。
脳裏に浮かび上がってくるのは、先輩の蔑むような顔で。
もう、傷つけられる事はないと何度も心の中で言い聞かせているのに、体は強張っていくばかりだった。
刻一刻と迫る、礼拝の時間。
震える指先を絡めて、心を落ち着けるように瞼を閉じる。
───魁さん……
私の心が求めるのは神様ではなく、いつも大好きなあの人で。
「会いたいよぅ……」
先輩の存在を掻き消して、脳裏に浮かんできた魁さんを想えば、無意識に小さく零れた心の声。

