急いで魁君の部屋へ行ってみたけれど……
響君の言った通り、部屋はもぬけの殻。
魁君の腕に刺さっていた筈の点滴の針は絨毯の上に転がり、大量の輸液がシミを作っていた。
「魁のヤツ……一体、何処に行ったんだよ?」
響君が、それを処理しながら呟く。
部屋を見回してみれば、脱ぎ捨てられたパジャマがソファーの背凭れに掛かっていて。
「もしかしなくても、魁君……外に出た?」
「は?」
「だって、外に行く用がなければ服に着替えないでしょ」
マヌケな声を出した響君に答えて、ソファーに掛かるパジャマを指差す。
「マジかよ……」
言葉を失くす響君に
「今頃、イギリスに向かってたりして……」
最早、冗談では済まなさそうな事を言ってみれば
「…………」
無言で、点滴の針をポロリと落としていた。

