あれから、点滴を受けた魁君は寝てしまい、俺達は静かに部屋を出た。
長い廊下を三人で歩いていれば
「思っていた以上に、大変そうだな……」
ポツリと呟いたのは響君。
「そうだねぇ。俺だったら、とっくにギブアップしてるよ」
苦笑いで答えながら、今までの魁君の努力を振り返れば、俺には絶対ムリだ!! って断言できる。
「でも、そこまで相手を想えるって凄いですよね……」
そこへ声を掛けてきたのは葵君で。
小学生の頃から一緒にいる葵君も、魁君の並々ならぬ努力を間近で見てきた一人だから。
「12歳で、一生の相手を決めちゃったからねぇ……魁君は」
俺が行くはずだったイギリスのパーティーに代理で出席した魁君は、そこでマリアちゃんと出会った。
もし、俺が出席してたらマリアちゃんに恋してたのかな?
頭の中で一瞬、考えてみたけど……
───いや、それは無いな
マリアちゃんを好きになっても、あの、兄弟を相手にする勇気が俺には無い。
改めて……心の底から尊敬するよ、魁君。

