『───…チッ……』
今の、舌打ちは何だ?
「俺も今からロンドンに向かうが、多分、この時間でギリギリだ」
今、兄さんとマリアが乗っているジェットはガルフストリームG650。
“プライベートジェットのロールスロイス”と呼ばれている最新機器を搭載する機体で。
ジャンボ機よりも高い高度を飛んでスピードも早く、成田からニューヨークまでノンストップで飛べる性能を持つ。
日本─ロンドン間をジャンボ機で12時間掛かる飛行時間も、ガルフストリームG650なら10時間も掛からない。
それに比べて今回、俺が乗ってきたエアバスACJは中距離用のジェットで。
ロンドンに帰るまでに、1~2ヶ所経由していかなければならないから、そのぶん時間も掛かる。
下手をすれば、俺も帰れないかもしれないなんて恥ずかしい事は、コイツには言えない……
『マークさんにもそう伝えて下さい。お願いします。手遅れになる前に……』

