「───随分と、楽しそうだったな」
仁王立ちで待ち構えていたマーク兄さんの低い声が、ぐさぐさと突き刺さるように聞こえてきた。
思わず、恐怖で繋いでいた手に力が篭ったけれど
「えぇ、とても楽しめました。これも、すべてマークさんのおかげですよ」
そんなマーク兄さんを全く気にする事無く、にっこり笑顔で言葉を返した魁さんは、私の腰に腕を回して引き寄せる。
瞬間、マーク兄さんの蟀谷には青筋が浮かび、アル兄さんが信じられないといった表情で魁さんを見た。
「約束だからな。破る訳にはいかないだろう」
「約束を守ってもらえて、嬉しいです」
「「……………………」」
あの機嫌の悪いマーク兄さん相手に、笑顔で対応できる魁さんって凄い!!
アル兄さんでさえ、固まってしまってるというのに。
感心して、魁さんをジッと見ていれば
「では、ディナーに行くか。マリアも、お腹が空いているだろう?」
さっきとは、比べ物にならないくらい優しい声色が落ちてきた。

