◇
真綿に包まれるように抱きしめられて、ほぅ……と小さく息を吐いた。
心地良い腕の中。
その温もりに安心感を覚えるようになってから、まだ日は浅いけれど。
日毎に、その想いは強くなっていく。
「そろそろ、行くか」
「……はい」
優しく頬に触れてくる、魁さんの指先を感じながら答える。
「あの人を待たせると、後が怖いからな」
くすくすと笑っている魁さんは、なんだかとっても楽しそうで。
自然と指を絡ませて、兄さん達の待つホテルの入り口へと向かう。
───夢のようなデートだったな……
後ろ髪を引かれる思いで振り返ってみれば、センスよく飾られているキャンドルライトが、心を彩ってゆくように輝いていた。
「また、来よう」
「はい!」
魁さんに声を掛けられて、迷う事無く返事をする。
肩越しに向けられた眼差しは、とても穏やかだった。

