数秒後、どかどかと鳴り響く靴音と共に姿を見せたのは、予想通り警察官で。
「貴様、覚えていろよ! この借りは絶対に返すからな!!」
警察官に拘束されながらも、鼻息荒く憤るシーモアだったが
「借り? 今回、借りを返したのは私の方だが? 爵位を剥奪されるような行為を行ったのは、貴様だ。
これ以上、ウィンザーを甘く見るなよ?」
「…………っ……」
兄さんの言葉に、口を噤んだ。
久しぶりに兄さんを本気で怒らせた男に、明るい未来はない。
連行されて行くシーモアに絶対零度の冷ややかな視線を向けた兄さんは、最早、暗殺者のようにしか見えなかった。
「……さて。気掛かりな案件も解決した事だし、クリブデンに行くとするか」
「そ、そうだね……」
小さく息を吐いたと思ったら、いきなり話題を変えてきた兄さんに、どもりながらも返事を返して後に続く。
漸くマリアに危害を加える人物が、このイギリスにはいなくなった事にホッと胸を撫で下ろしながらリムジンに乗り込んだ。

