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私が落ち着くまで、何も言わずに髪を撫でてくれていた魁さん。
その手の感触が心地良くて、広い胸に頭を預けて瞼を閉じた。
どくんどくんと伝わってくる力強い鼓動と、ふわりと香ってきた魁さんの匂いが私を安心させてくれる。
凍てつく寒さを遮るように包まれてから、どれほど経っただろうか。
腕の力が弱まって、魁さんが微かに動いた気がした。
泣きはらして重くなった瞼を持ち上げて、そっと様子を伺ってみれば
「魁さん……?」
じっと私を見下ろしている魁さんと視線が絡んだ。
心を射抜かれるようなその眼差しに、微動だにできずにいると
「マリア」
私の名前を呼ぶ魁さんの声が、鼓膜を甘く震わせた。
「……はい」
再び忙しなく動き出す心臓がバクバクと音を立てて、返事をした自分の声が遠くで聞こえる。
「……………………」
何も言わずに、スッと差し出されたのは、手のひらサイズの小さな黒い箱で。
「え……?」
左右に開いた箱の中には、キャンドルライトに照らされて光り輝く指輪が入っていた。

