結局、言葉にする事が出来なくて苦笑いで誤魔化していれば
「……汗」
ぽつりと呟いた魁さん。
「え?」
よく聞こえなくて、思わず聞き返してしまったけれど……
「汗、拭いてくれるんじゃないのか?」
するりと、タオルを握り締めていた手を掴まれれば、“ばっくんばっくん”と再び跳ね上がる心拍数。
上目遣いで視線を絡めてくる魁さんに、頭がクラクラしてきた。
───ダメだ……
冗談なんかじゃなくて、本気で鼻血が出ちゃうかもしれない!
だって、今の魁さんは警戒心ゼロでフェロモンがダダ漏れ状態。
今まで目の当たりにした事がないフェロモンを、私に耐えられる筈もなく……
顔に熱が集中していくのが、自分でもよくわかる。
「……はっ、ははははいっ! 只今、拭かせていただきます!」
どもりながらも、何とか声を出して答えると、きょとんとした魁さんは
「……ぶっ! くっくっ……何だよ、その言葉遣いは」
珍しく吹き出して、初めて見る無邪気な笑顔で笑い始めた。

