「・・・なんで、って顔してる。」
あたしを覗き込む、真琴の瞳には真剣な光が見えた。
「・・・してないよ。」
「してるよ。・・・自分に正直になったら?俺は、ヒナは取り乱すくらいに“アヤ”のこと聞くと思ったんだけど。」
真琴の口から、その名前が出た瞬間、あたしの心を何かが突き抜けた。
そのまま、真琴に抱きついて、泣き叫んだ。
「じゃあ、教えてよ!アヤのこと、知ってるんでしょ?どこで何してるとか、本名とか、住所とか、連絡先とか、この2年間のこととか、あたしのことどう思ってるかとか!全部全部知らない、教えてよ!真琴!!」
通行人が、次々と振り返るくらいに叫んだ。
真琴は嫌な顔ひとつしないで、あたしの乱れた心を受け止めてくれる。
「・・・俺は、アヤのことなんでも知ってるよ。気持ち以外なら。」
「アヤは、どこにいるの?あたし、アヤに会いたい・・・っ!」
真琴は、優しくあたしの涙を拭って、小さく、悲しそうに笑った。
「大切なことは、アヤの口から聞いたほうがいいよ。アヤがいる場所だけは、教えるけどね。」
そう言って、メモとポケットから取り出した。
そこには、とある場所が書いてあった。
その場所は、あたしのよく知る場所で、その場所こそが全てを物語っていた。
「・・・うそ・・・アヤが、ココに・・・?」
真琴は、頷くだけで何も言わなかった。
その優しさに、どれだけ助けられたのだろう??
感謝しながら、あたしは微笑んだ。
「ありがとう。」
真琴はいつもどおり優しく微笑んで、「うん。」と呟いた。
その瞳が少し潤んでいたのは、嘘じゃなかった。


