いつもどおり、ご飯を食べて、家を出る間際。


「ヒナ、忘れ物。」


「またー?」


嘘だとなんとなくわかってしまったあたしは、自分からキスをした。


しっかりと、アヤを刻み付けるように。


大学でも頑張れるように。


そんな意味をこめて。


「で、忘れ物は?」


意地悪っぽく言うと、アヤがムッっとした表情を浮かべて、激しくキスしてきた。


いつもより、長いキス。


「以後、そういう意地悪は言わないように。」


注意されて、はーいと軽く返事をしたら、抱きしめられた。


「行ってらっしゃい。」


アヤの温もりを感じて、心が満たされたのを確認して、身体を離した。


「行ってきます!」


いつもと変わらぬ笑顔が見送ってくれた。