「おかえり。」


そう言ってくれる人は、あたしの家にいなかった。


暗い家に帰ってくるのは、決まってあたしだった。


あたしは弟に、言うだけだった。


いつも、あたしが寝る前に書く置き手紙にしたためた言葉だった。




「ただいま。」


そう言う両親を見たことはほとんどない。


いつもあたしが寝た頃に帰ってくる。


毎日溜まっていく置き手紙は、朝起きると必ずゴミ箱に捨ててあった。


それを見るのが、辛くてたまらないはずなのに、毎日書いた。


そして、それが毎日捨てられていくのを、どうとも思わなくなった・・・