「・・・ヒナ。」


あたしをそう呼ぶから、一瞬、アヤがいるのかと勘違いした。


振り返ると、真琴が立っていた。


「なに?」


「ごめん、俺・・・」


「謝んないでよ。真琴は何も悪くないよ。」


涙をこらえて、小さく笑うのが精一杯だった。


「ヒナ。俺、ヒナのこと好きだよ。」


やめてよ。


「でも、ヒナより好きな人ができたんだ。ちゃんと話せなくて、」


「もう、いいから!あたし、今幸せなんだ。」


「え?」


「真琴のおかげだよ。ありがとう。」


・・・ちゃんと、言えた。


ずっと真琴に伝えたかったこと。一番伝えたかったこと。


「これからも、友達でいてくれよ。」


「うん!」


最後に真琴が少しだけ悲しそうな顔をしたのが、せめてもの気持ちだったのかもしれない。


真琴が消えた雑踏の中で、あたしは泣いた。


真琴に別れを告げられた、アヤに出逢った、あのときのように。


でも、気持ちだけは違ってた。


あたしは、あたしにはアヤがいるんだ。


そう思えるだけで幸せだった。