「アヤ。」


「お風呂ありがと。ヒナも入っておいで?」


タオルを肩にかけて、まだ濡れてる髪のままのアヤに抱きついた。


「・・・どうした?」


突然の行動にも、いつもどおりの優しさで受け止めてくれる。


「あたし、怖くなったの。」


「なにが?」


アヤの髪から滴る雫が、あたしに触れた。冷たかった。


「明日からまた大学に戻るでしょ、それで、アヤがいなくなったらどうしようって、そう思ったら怖くて・・・」


「ヒナ・・・。」


「ねぇ、アヤ。行かないで。ずっとここに・・・っ。」


それが本音だった。


昨日のアヤの言葉が脳内をよぎった。


”時間は関係ないよ。”


そうだね。時間なんて関係ないよ。


たとえ出逢ったのが昨日でも、1年前でも、5年前でも。


アヤへの気持ちは変わらないから。


「ヒナ、俺にどうしてほしい?」


こんなときにまで、余裕みせないでよ。


あたしは顔を上げて、アヤを見つめた。


「・・・あたしのそばにいて、これから先ずっと。」


「了解。」


そのキスは、おためし彼氏の契約を締結するキスだった。