夕ご飯はあたしの大好物、オムライスだった。
なんで、あたしの好きな食べ物知ってるの?って聞いたら、「それは、俺がヒナのこと好きだからだよ」って返ってきて、全然答えになってなくて。
それでも、アヤが笑ってくれて。
あたしも笑顔になれた。
「アヤー、お風呂。」
「ん。ありがと。」
お風呂場から聞こえる水音をかき消すように、ウォークマンのボリュームを上げた。
・・・なんか、新婚さんみたいじゃない?
なーんてこと考えながら、参考書を開いた。
明日から大学に行く、普通の生活に戻る。
昨日は土曜日。今日は日曜日。
非現実的なアヤとの生活は、今日で終わり・・・。
明日。きっとあたしが帰ってくる頃には、置き手紙があるだけ。
アヤという人なんていなかったかのように、また普通の日常が巡って・・・。
それで。
それで、あたしは?
大学に行って、真琴と彼女が一緒にいるのを見て、悲しくなって。
それで家に帰って、ひとりで泣くんだ。
忘れられない思い出を見つめ直して、ひとりで・・・
ウォークマンの電源をOFFにして、参考書を閉じた。


