「落ち着いた?」


出されたのはコーヒーではなく、ココアだった。


家にココアなんてあったんだ。気付かなかったな。


「うん。・・・ごめんね、アヤ。」


「ばーか。ごめん、じゃなくて他にあるでしょ?」


デコピンされてしまった・・・。


「・・・ありがと!アヤ。」


「ん。」


今度は額に軽くキス。


顔が火照る!アヤの人たらし!!


じーっと見つめると、どうかした?と余裕ぶった笑顔をあたしに向けた。


その余裕に、告げる言葉も出ない。


「・・・まだ、足りない?」


ふっ、と口元を緩ませて近づいてくる。その距離、20cm。


ドキドキと高鳴る鼓動の音が伝わってしまいそうで。


「な、なにが!」


「足りなさそうな顔してますけど?」


だから、何がって聞いてんのよ~っ!


「・・・満たして欲しい?」


また距離が近くなる。15cm。10cm。


ギュッと目をつむるとコポコポと音がして、ゆっくり目を開けるとアヤがココアを注いでいた。


「足りないんでしょ?だから、満たしたよ。・・・ココア。」


・・・ココアか・・・


肩の力が抜けて、椅子の背もたれに寄りかかるあたしを見て、アヤは小さく笑った。