私はぺコリと一礼し、ゆっくりと病室へ向かう。
コンコン
「海原君、麻美だけどいい?ダメなら出直すけど・・・・・」
少しの間沈黙があったけど、向こうから小さくどうぞ、と聞こえたので入って行った。
「どうした?俺は少し疲れただけだって
。
どうせ母さんがことを大げさに話したんだろ、大丈夫、明日には退院できるって言われてるからさ」
「・・・・・そう。
なーんだ、よかった。
心配してたんだよ?そうだ、いろんなこと教えてあげるよ。
じゃあまず〜、碧海が今まで告られた数!何人だと思う?」
「うーん・・・・・、三十人くらいか?」
「はずれー、正解はなんと・・・・・百人以上!!具体的な数はわかんない。
だって多すぎるんだもん、百人まで数えたところで諦めちゃったよ」
それはずるいぞ、と海原君が無表情で言う。
・・・・・海原君は今までだって辛い思いをして来たんだ、もう余命2ヶ月なんて言えるわけがない。
海原君の私を安心させるために穏やかに言ってくれたあの表情。
その顔を見たら、喉元まででかかっていた言葉があっという間に戻って行ってしまった。
その表情を壊したくなくて。
その表情を見失いたくなくて。
だから、わざと明るい声を出して明るい話題を出した。
でもそれにもいつかは限界が来る。
私は、不覚にも涙をポロリと流してしまった。
