私は走るところは走り、歩くところは歩きながら写真を撮る。
海原君が喜んでくれそうなものを写真に収めて行く。
「○×病院までお願いします」
タクシーに乗った後も私は窓から見える景色を、信号で止まったたびに撮っていった。
もう今日撮っただけでも軽く百枚は越している。
けど、まだまだ足りない。
数では無く心にぐっとくるような写真が欲しい。
「・・・・・さん、お客さん!着きましたよ」
タクシーの運転手さんに呼ばれて私は我に返る。
お礼を言って代金を払ってから海原君の病室へと向かう。
一歩一歩進む度に私の心臓もドクンドクンと跳ねる。
ついにドアの前へ立った。
深呼吸をし、ノックをして中にいるであろう海原君に呼びかける。
「海原君、私だよ麻美。
入ってもいい?」
中から何度耳にしても慣れない綺麗なアルトの声でいいよという許可の声。
深呼吸しても収まらない胸の高鳴りを止めるように心臓のある場所で両手をギュッと握りしめる。
「麻美、久しぶり。
会いたかった」
最後に会った時よりも幾分か和らいだ物腰と表情。
私も海原君に同じ言葉を返す。
「海原君、久しぶり。
私も会いたかった」
