「麻美、できたわよー。
あっつあつだから早く食べちゃいましょ」




十分ほど経ち、お母さんが私を呼ぶ声が聞こえてきた。
もう落ち着いて熱は帯びてないようだったけど、念のため鏡で顔が赤くないことを確認してからテーブルに着く。




「・・・・・」




「・・・・・」




「・・・・・」




何の会話もないまま黙々とフォークに巻きつけ口に運ぶと言う作業を繰り返す。
五分以上も沈黙が続く。
最初に口を開いたのはお母さん。




「どうスパゲッティの味は。
友達に教えてもらった秘伝のトマトソースを使ってるんだけど」




「おいしいよ」




「うん」




伊藤先生が感想を言う。
だけど私はずっとぼーっとしていて、何を聞かれてもうんとしか言わなかった。
食べ終わり、食器を片付けにシンクへ行くとお母さんも一緒についてきた。




「麻美、やっぱりなにかあったんじゃないの?普段ならうるさいほど喋るのに今日はうんとしか言ってないじゃない」




さっき部屋にお母さんが近づいて来た時は気持ちを悟られたくないと思った。
だけどお母さんの心配そうな表情を見たら、まぁお母さんなら、と思い海原君のことを好きになったと告げた。
お母さんはなんていうかな、反対するかな、それとも賛成?