しばらくその場にぼーっと立っていたら、他の生徒が見ていることに気づき早歩きで立ち去る。
「ただいまっ」
「おーおかえりー」
「おかえりなさーい」
帰ってきたお母さんと伊藤先生が声だけで返す。
私はそのまま自分の部屋に駆け込みベッドにダイブしてりぼんをぎゅっと抱きしめる。
なぜか急にりぼんに抱きつきたくなった、つまり私は何か悩んでるってことなのかな。
そんなことを考え目を逸らそうとしても意味がない。
だってもうそのことで頭がいっぱいになっているから。
「りぼんどうしよう、他の男の子がずっと海原君に見えるよ・・・・・。
童君が喋ってる時もずっとずっと・・・・・」
そう、今日学校に行ってから一日中ずっと。
千羽鶴を折ったり色紙を書いている間はそれに集中できたけど、授業中とかは海原君の姿が目を瞑るたびに浮かび上がってくる。
「麻美どうしたの、何か嫌なことでもあったの?帰ってくるなり部屋に駆け込んじゃって」
「う、ううんなんでもないよ。
それより今日の夜ご飯なーに、私お腹減っちゃった」
お母さんはスパゲッティよ、ちょっと待ってねと言って離れて行った。
危ない、部屋に入って来られたら絶対にわけを聞かれただろうから。
どうして顔がそんなに赤いのかって。
