1.物語はもう始まっている

「もー、やだー遅刻遅刻」

というセリフからこの物語は始まる。

この始まりからしてもうまごうことなき神作品のそれであるし、これからは航空戦艦の時代でもある。最上のやつも元気にやっているのだろうか。

さて、

あれは何歳の頃だったのだろうか、まだ幼稚園にいってないか、その前かそのみまちか、どちらにせよ僕が幼稚園に行った最初の日のことをまず話そうと思う。


卒園式という同時スタート横並び一斉(単横陣)というものではなく、転校生のそれのようなタイミングで。

なんというかすでに出来上がってるグループにオマエ誰だよ艦隊に単艦で綾波のように突っ込んで入っていくという、特型駆逐艦(吹雪型)の11番艦というかなんというか大人の私でも重圧で胃腸がキリキリと痛むようなそんな日を今でもついこのあいだのように覚えているわけで。

というか、ついこのあいだのようにおぼえているというのも可笑しい。おかしいっぽい。どんだけ俺は人生がスカスカなんだって話。

まぁ、実際ほかに覚えておかなければいけないような重要なことがないので今でもなお鮮明に覚え続けているわけで。

なんというか知らないおっさんのはじめて幼稚園に行った日の話をどれぐらいの人が読みたいのかと問われると、いささか不安ではあるが、あえて続けてみようと思う。中破は無傷。



  「君にXXXを捧げよう」




視界がぐんにゃりとし、沢山の人の声が耳に入り込み、大勢の人がいるところに気がついたらいた。

ここまでの道中をはっきり覚えていないのは先の不安や心配事、緊張を緩和するために泣き続けていたせいなのだろう。

「ナマタ少年はこれからどうなってしまうのか」


という戦隊特撮モノのナレーターの声が脳内に響くことで我に返った時、私少年(わたししょうねん)はグランドのほぼ真ん中にいた。

ちょうどそれぞれが思い思いのグループに別れて、思い思いのことをしてフリーダムを満喫しており、自分はというと緊張のあまりふらふらと日当たりの良い白い壁までするすると歩み寄って立ち小便をした。

「あんたはイヌか」

と、上からおねぇさんにしかられた。というところまで書いたところでセラピーは概ね完了しました。


こういった昔の話や自分の話をすることで自分が自分であることを何とか繋ぎ止めるのですが、これって本来ならば恋人や家族や友人や親戚や暇なバーとかスナックでお金を払ってするような話。無料で読まされるなんて、ほんと恐ろしい話ですね。きゃは☆

恐ろしいといえば、私には恐ろしいものが多い。

急に発作的に自分が恐ろしいことをしでかしやしないか? とか、それと同じように他人も自分になにかとんでもないことを・・・といった無限ともいえる可能性の広がりがとにかく恐ろしい。


実際そんなことをしたりされたりはないからそれなりに元気にすごしてきたのであるが、記憶の奥に隠したのではないのかという仮定は否定出来ず、奥に隠したからそれを見つけることが怖いようにも思うし、もしかしたら自分は人を知らず知らずのうちに。なんてことも。

そのうちおもしろくなると期待してここまで読んでくれている方をすでにこの時点でうらぎっているわけでもあるし。がっかりさせたくない方法として書かないとかUPしないとかもあるのですが、もう恋なんてしないなんて言わないよ絶対とかもあるのですが、誰かが勝つと誰かは負けるし、かといってもじもじしてると時間ばかりが過ぎていくのです。

平凡というのはそんなもんだろうと呑気に感情をはっきりと表に出す性分ではなく、平和的にへらへらとして流しているようで実際は必要以上に根に持つタイプの私は他人にもそういう要素を大きく当てはめてしまうのか、そんなよくわからないものとしての闇。その暗闇からなにかとんでもないものが、膨らんで破裂してこの世に現れるのではないか。こわひ。


というのはニュースを見ていればだいたいわかる。だから見ないようにしてる。鬼やお化けは見たことはないが、できることなら見ないままこの生涯をまっとうしたい。そんなものは闇から出てくるかもしれないぐらいでちょうどいい。

そのようにして闇をあまりに怖がる私に本物は昼間からでも出るからなと父親は言った。(すこしだけ小説っぽくしていこうという試みその1)

そのあとに特撮戦隊モノは東京で実際あるんやでと噓を叩きこまれたが、大怪獣と揉み合いになって通天閣がなぎ倒されるという場面に興奮し「大阪や大阪や」と言う私に「ほんまやな」と酔った赤い顔を返した。翌日に見に行くとなんともなってなかった。