ほっと安堵の息を漏らす翔。
そしてあたしから視線を松永さんに移す。
「おい、杏に危害は加えるなよ」
「見えなかったんですもの。
故意じゃありませんわ」
あたしを睨みつける松永さん。
白々しい。
「もう俺らに関わるな」
「翔様は私と結婚しますの。
変な女に騙されたままでは黙っていられませんわ」
「俺は杏と結婚する。
お前もフランスに戻れ」
冷たく言い放つ翔。
それだけ言うと、あたしの手を引いて歩き出した。
「あの女、邪魔ね。早いうちに潰さなくては」
1人残された松永さんが黒い笑みを浮かべながら、そう口にしていたことをあたしは知らない。