ざわざわざわ。




煩い教室の、1番後ろの真ん中辺。



いつも俯いて縮こまる私には、それでもちょっと居心地の悪い席。



でも周りは気のいい発言有力者ばかりで、あたしにもたくさん話しかけてくれる。



赤面症のあたしは話しかけられる度真っ赤になってしまうけど、みんないい人たちだった。



と、突然目の前で声が上がって、あたしの思考は中断された。



「このあと席替えでしょ?

俺やりたくねー!」



本を開いていたまま固まっていた目線を上げると、鈴木くんだった。

どうやらこの辺りの人に絡みに来ていたらしい。



ほんとは違う席なのにあたしの前の席にどっかり座って、長い足を組んでいる。



ちなみに斜め後ろを向いていたのであたしの動作は即座に捕らえられ、しっかりと目線を合わされてしまった。



途端に熱くなる顔と手。体温が高くなったせいかうっすら汗ばむ。


ああ。だからこんな赤面症の自分なんて嫌いなんだ。




「俺さー、授業態度悪いから次の席もう決まってんのー。教壇の真ん前!

マジありえねーよなー。」




私にか、その隣の男子か、はたまたその前の女子か。


誰にともなく話す彼は、たぶんみんなに話してるんだろう。



「しかも!
隣と前の女子も決まってんの!

田中と久保田と代田!
後ろくらいいい人じゃないと、俺死ぬ」



聞けば田中さんと代田さんは、2人揃うとオタクトークがすごいから嫌、とか。

久保田さんは部活で一緒。


つまり、新しい出会いが欲しい、と。



態度からして三人とも嫌いではないんだろう。


彼女欲しーなー、なんて飄々と言う彼だから嫌味なく言えてしまう。



いつものように、まだ赤い顔でみんなと一緒に笑えば、言葉少なでも会話に参加できる。


でもその日に限って"ね?"というように私と目を合わす鈴木くんにどきっとした。



だって、私は鈴木くんの後ろにはなっちゃいけない人。


後ろになったら、鈴木くんががっかりする人。







ーーでもね、


あたしが鈴木くんの後ろの番号を引いたとき、君は私を振り向いて言ったんだ。







ーー"よかった。キミで。"