*後日談

「果穂、ゲーセン行くぞ。」


え、なに急に。あたしゲーセン嫌いなんだけど。てか今から行くの?


あたしの声を見事に聞き流して引っ張ってきた放課後のゲームセンター。


龍哉はちょっときょろきょろしながら奥の方に進んで行く。


ちょっと躊躇って入ったのはプリクラ機の中だった。


『そんなに撮りたかったの?
てか撮り方わかるの?』


「それは、なんとか。部活の奴らに連れてこられたことあるし。」


ちなみに龍哉はサッカー部。女子マネすらいない。うわ、むさ苦しい。


龍哉がさっさと硬貨を4枚入れてくれたので背景やいろいろは私が勝手に決める。


「…あ、俺これがいい。」


黙って見ていた龍哉が突然背景をひとつタッチした。


『…え?まあ、いいけど。』


首を傾げながらも時間が迫っているのでさっさと残りを決めた。



ハートを作ってだとかの指図は完全に無視してただのピースのみで3枚が終わった。


あ、次龍哉が選んだやつだ。
ピンク地に薄い黒の猫が踊っている。


「な、あれ、やれよ。」


龍哉がすっと画面に小さく出ているモデルを指差した。


上目遣いで丸めた手をこまねいている。


『やらない。』


「じゃ、勝手にちゅープリする。」


『……やります。』


一瞬の沈黙の末、あたしが折れた。
この狭い箱の中で逃げることなんて不可能だ。


撮るよー、といやに親しげな声が響いてきたので私は観念してポーズを固めた。


+ + + +


2人で落書きをしたプリが出てくるのを待つ。


いや、龍哉は1枚で精一杯のようだったからほとんど私が描いたのだけど。


ことん、と落ちてきたキラッキラした写真はいつもより大きくてシンプル。


私はいつも部活全員でとかじゃないと行かないし、落書きも任せっきりだ。


おずおずと龍哉に半分渡すと、お気に入りらしい猫のカットに夢中だった。



…せいぜいが名前だけの中に一枚だけ。

"好き"とスタンプを小さく押してしまったことに、龍哉が気づかなければいいんだけど。