「どう?」

尋ねられても涙が止まらない私。

「え?ど、どした?」

「お母さん……の味がするっ!(泣)」

「へ?」

「先生の唐揚げ……お母さんの味がするのっ!」

涙がボロボロと溢れ出す。


「え……。」

「どうして?私にはこの味が作れないの!なんで……先生が……」

「……ハチミツ……か。」

え?

「実はな、この唐揚げ、
恵子さんが合宿の時に作ってたのを習ったんだよ。」

「……え?」

「俺、元々料理担当でさ、
先生と一緒にキッチンにいたんだよ。
唐揚げは部員の大好物だったから習った。」

「……ハチミツ……?」

「そう、ハチミツ。
鶏肉をタレに漬けるときに少し入れんの。超美味くなんだよ!」

「先生のバカァ……」

「へ?バカ呼ばわりかよ!」

「もっと早く教えてくださいよぉ!(泣)
バカ、バカ、バカバカバカバカァ!」

涙でぐちゃぐちゃの私。

「あー、悪かったって、
もー泣くな!美味いもん食ったときは笑え!」

そー言って私の頭をポンポンする先生。

「う……ぅ……おいしぃよぉ……」

「……そんな顔で泣くこともあるんだな。」

「ふぇ?」

「いつもしっかりしてるからさ……」

……人前で泣くことなんて久しぶりだった……。

「……泣いた顔は男を誘うんだぞ?」

……。

「先生のバカ。」

「うるせー。
俺だって男だボケ!」

「……口が悪いです。」

「……お前もだろ!……さっさと食べなさい!」


「はぁい!」

そう言って私は
見事に全てたいらげた。