大人の臆病【短編】

私がこうちゃんの胸を借りて全部吐き出そうとした瞬間。


「雅!お前何やってるんだ。」


怒りに満ちた低い声でその主を見ようとこうちゃんの胸から離れた瞬間

腕を引っ張られ彼の胸へと移動させられ私の身体をギュッと強く私を抱きしめた。


どうして克己がここにいるの?

こんな事しないでよ。また勘違いしちゃうじゃん。


必死に身体を離そうとするが克己の腕の力によって離れられない。


「貴方、みやの何ですか?」

こうちゃんが冷静な声を出し克己に聞いた。


「…俺は…」

克己が声を出した瞬間、私を抱く力が少し弱まり今度は肩を持たれ少し距離が出来たので彼の顔を見てみると切なそうな顔をした彼がいた。


どうしてそんなに悲しい顔しているの?


私達は見つめ合った状態で私が視線を逸らそうとした時

「俺は、ずっと雅の特別な存在で居たい人。」


私を見つめて克己はこう言った。


えっ?意味が分からない。

私の特別な存在で居たいって何??

仕事の上司としてって事でしょ?