あの日の記憶



もう何が何だかわからない…。



体が震えて思うように動けない。



早く…救急車を呼ばなくちゃ…。



腰が抜けて、力が入らなくて…。




ぎゅっ



「…はる…と…?」



春斗が抱き締めてくれた。それだけで自分でも驚くほど落ち着いた。




「…っ…辛いよな。おじさんもとおばさんも…こんな…」


春斗はそう言いながら唇をぎゅっと噛んだ。



それから私が落ち着いたのを確認してから、救急車と春斗の両親に連絡をしてくれた。




本当に頼りになる と、本当に大好きだ と改めて実感してしまった。



救急車が来て、春斗の両親が来た。



「桃!紗綾!」


おばさんが私と紗綾の名前を呼んで駆け寄ってきた。



二人いっぺんに力いっぱい抱き締めてくれた。



「なんで…隆生だけでなく穂香まで…」



隆生はお父さんの名前で、穂香はお母さんの名前だ。



おばさんはそう言って泣くのを我慢していた。