あの日の記憶




死んでしまったのだろう。

良くて危篤なのだろう。


冷静にそれらの事が浮かび上がってきた。


泣けなかった。否定できなかった。


別に悲しくないわけではない。


お父さんの事は嫌いでは無いし、むしろ好きだ。



でも…なんでだろう。何も感じない。



みんながざわめく声さえ耳に入らなかった。



だが、1人だけ違った。



「桃!」


春斗だった。


私の肩を掴み、揺らしながら私に向かって叫んだ。



「何突っ立ってんだ!!おじさん危ねぇんだろ!?早く帰らなきゃだろ?俺もついてってやるから!」


あ…涙出てきた。



きっと誰かに早く行けって、背中押してほしかったんだ。


帰ってお父さんの容態を聞くのが嫌だったんだ…私…



そう思っている間にも、春斗は私の手を引き教室を出た。