「何回も呼んでんのに気付かねぇんだもん!分かんないとこでもあった?俺、教えてやるけど!」
先輩、私の名前を何度も呼んでくれてたんだ。
全然気付かなかった。
勿体ないことしちゃったな。
「ほら、遠慮すんなって!どれ?」
「じゃあ、これ…」
適当に、難しそうな問題を指差す。
「わ、懐かし!これ、むずいぜ?」
先輩はそう言って、私のシャーペンを持ち、手を私の座る椅子に回した。
もう、このシャーペンしばらく家に保存しよう。
ドキドキは、最高潮。
ごめんね、先輩。
一生懸命教えてくれてるのに、本当は全然聞いてなかったんだ。
こんなに近くで先輩を見れる機会は、もうないと思ったから。
先輩の腕、手、指先、顔、体、瞳…。
すべてが愛しかった。