「おし!直った!」
先輩は、いとも簡単にマイクを直してくれた。
「ありがとうございます!」
メンバーみんなで先輩にお礼を言った。
「せっかく早く来てたのに、遅くなってごめんな?練習頑張って。」
先輩はしゃがんだまま、申し訳なさそうに言った。
先輩、優しすぎだよ…。
来てくれたし、マイクまで直してくれて、感謝でいっぱいなのに。
謝る必要なんかないのに。
そして、先輩は立ち上がり、ドアの方へ向かった。
行っちゃうんだ…。
私は切なくなって、先輩の背中を目で追った。
ワックスでセットされた柔らかそうな髪が、私の恋心をくすぐる。

