恋を奏でる軽音部



「翼と、何かあった?」


「え?」



拓海先輩は、持っていたペットボトルの水を一口飲むと、私の目を見て言った。


私も、瞬時に拓海先輩の方に顔を向けた。



「この間の見てれば分かるよ。好きなんでしょ?」


「まぁ、はい…。」



先輩の言う、この間というのは、階段で転んだあの日のこと。


あれだけ感情表に出してたら、バレても仕方ないか。



そして、先輩は視線を大きく外し、ステージの方を見ながら言った。


ラスト1曲で、ライブが終わる。



「しっかしさぁ、翼も分かりやすいんだよねー。あいつも、花音ちゃんのこと好きなんだってバレバレ…」


「ちっ、違います!!先輩が好きなのは、梓先輩です!」



私は、大声で拓海先輩の言うことを否定した。



先輩は驚いた顔でこちらを見た。