私は一人、町へ出ていた。

やはり、ジロジロ見られるな。

私みたいな貧乏人がいると。

周りは貴族ばかり。

下卑た目つき、派手な装飾品。

気持ち悪い。

貴族に目を向けていたら、誰かにぶつかった。

『痛っ!』

私は派手に転んだ。

最悪!このバカ貴族!前見ろよ!

『大丈夫ですか?すみません』

え。

この人、私に謝った?

貴族が?意味不明。

『大丈夫ですか?怪我してない?』

『い、いえ!』

びっくりして、私はかけ出した。

私に、優しい笑顔を向けた貴族。

何故かドキドキして、気がおかしく

なりそうだ。

けど、貴族は貴族。

最悪な存在であることに変わりはない。

だから、早く忘れよう。

本当の目的は、金を持っていそうな

貴族の家を探すために来たから。

ん?

さっきの人、ここに入って行くな。

こっそり覗いた。

そこには、召使がたくさんいて、

彼を出迎えていた。

そして、とても大きくて豪華な屋敷の中

に入って行く。

『お帰りなさいませ、拓也様』

『ただいま』

ここ、あの人の家だ。

今までとは比べ物にならない大きさ。

金はありそうだな。

けど…

さっきの人の笑顔が思い浮かんだ。

ダメだ。何故か身体が動かない。

私が私で無いみたい…!

他を、当たろうかな。

そう思っていたときだった。

「今日、パーティ行く?」

「あ〜、あれか?行く行く!
なんせ可愛い女の子いるもんなあ。
どこでやるんだっけ?」

「若崎家の別荘らしいぞ?」

え。今日、パーティがあるの?

じゃあ、取り放題じゃない!

けど、若崎家の別荘ってどこよ?

「船か?」

「ああ。リゾースランドに船で」

リゾースランド、ねぇ…

船で行くなら、簡単だな。

この町に船着場は一つだけだったはず。

そうと決まれば行くか!