「まだ咲いてるんだね〜」
「ん?桜か?」
「うん」
横並びで進んでいくふたつの自転車。
桜並木の道を通り抜けていると、ピンク色の花びらがヒラヒラと舞い落ちてきていて。
「ちょっとストップ!」
あたしはそう言うと、桜の木の下でキキーッとブレーキをかけた。
「なんだよ」
すると、同じようにブレーキをかけ、涼はこっちを振り返った。
「写真撮って♪」
「はあ?何で」
「だって超キレーじゃん、花びらとか舞ってるし♪初めての制服姿だしさ!ねっ?」
「…ったく…何で俺が」
ブツブツ文句を言いながらも、涼の自転車のスタンドは、カシャンと音を立ててとめられた。
「このへんかな?いい感じに写ってる?」
「はいはい、写ってる写ってる」
「本当に?」
「大丈夫だって…撮るぞ?」
「うんっ♪」
「はい、チーズ」
カシャッというシャッター音が聞こえると、あたしはすぐに涼のもとへ駆け寄った。
「悪くないだろ」
「うんっ!超いい感じ!可愛い♪」
「自分で言うなっつーの」
めんどくさそうに口を尖らせる涼。
ふと気が付くと、そんな涼を見上げるように見ている自分がいて。
本当に背、結構伸びたんだな…なんてその時改めて感じた。



