《文昭視点》

『おい文昭、
最近おかしいぞ?』

ガキの頃から一緒に居る
幼なじみに
そう言われたのは
別れて一ヶ月した頃だった。

『実はさ、
付き合ってた恋人と
一ヶ月前に別れたんだ』

酒の入ったグラスを
置いて、俺に向き直った
そいつは先を促した。

『んで?』

『俺は別れたいと
思ってたんだよ
年の差とか……同性だとか
色々あったからな。

それをあいつは
感づいてたみたいで
置き手紙一つだけ残して
先に別れを告げられたんだ。

そんで、あいつが
出て行ってから
気付いたんだ……
まだ好きなんだってな』

誰かに吐き出したことで
此処一ヶ月のモヤモヤが
晴れた気がする。

『お前バカだろう』

呆れた口調で言われた。

確かにバカだけどさ。

『本当に好きなら
もう一度、告白してこいよ
お前の程が年上なんだから』

その言葉に俺は
車のキーと携帯だけ持って
部屋を飛び出した。

簾次、ごめんな。

今、行くから。


(完)