「凪斗のバカっっ!!」


裏庭からの帰り道。


私は教室に向かうための廊下を歩きながら、頬を膨らませた。


「『俺のだから』なんて、絶対岡田君誤解したじゃんかっ!!」


私の言葉なんて無視して、1人、前をすたすたと歩いている凪斗。


実はー…


『え、春日井って…鈴村と付き合ってんの…?』


凪斗の『俺のだから』宣言の後ー…キョトンと目を丸くして、私と凪斗を交互に見回す岡田君。


『ち、ちがう!こいつとはただの幼なじー…ふがっ』

“幼なじみ”ー…


そう否定しようとしたのに、私の言葉は凪斗の手のひらによって虚しく遮られた。


『ん?そう、美亜とはながーい付き合いでさ。小さい頃から約束してんの。美亜は俺のものだって』


『ふがふがふがっ!ふがふがふがふがふがふが!!(ふざけんなっ!約束なんて一言もしてないっ!)』


精一杯の私の抵抗。


だけどそんなもの、凪斗には痛くも痒くもないわけで。


『そういうわけでごめんね、岡田君って?美亜は律儀だなー。ん?俺と二人きりになりたいって?大胆だなー、美亜は。じゃ、行こうか』


そこでくるっとUターン。

私は凪斗に口を押さえられたまま、裏庭から離れ、しばらくして解放された。