『け、けっこんするんだし、ちゅ、ちゅー、するか』

『ふぇ??』


ぬいぐるみが戻ってきてすっかり上の空だった私は、光君の言葉を聞いていなかった。


光君を見ると、顔が異常なまでに真っ赤っか。


頭から煙がもくもくと出てきそうな勢いだ。


『だいじょうぶ?ひかるくー…』


心配になり、私が光君の顔を覗き込んだその瞬間。


ぐいっと力強い勢いで、私の腕が後ろに引かれた。


『きゃっ!?』


一瞬、目の前がスローモーションになって、次の瞬間、私の背中が何かにぽすんとぶつかった。


目の前には私を見てポカンと口を開けている光君。


いや、正確には、私の後ろを見て。


私は恐る恐る光君の目線をたどってみる。


私の背中にぶつかったのは。私の腕を掴んでいたのは。


同じ組の、鈴村凪斗(すずむら なぎと)君だった。

え?え?


私の頭はパニック寸前。


凪斗君は、女の子に人気がある。


かっこいいし、四歳なのにピアノだってできるらしいし、←(保育園児からしたらすごい)この前だって隣の組のヒマワリ組の女の子からラブレターをもらっていた。


光君もモテるけど、正直言うと凪斗君とは比べ物にならない。


そんな人が何故私の真後ろに!?


そして何故私の腕を掴んでいるのっっ!?