演劇部の記憶

あのときの勧誘は強引だったかな……。とベッドの上で寝がえりをうちながらわたしはつぶやいた。そして、少し弘が買ってきてくれた月見うどんを食べようと思い、ベッドから起きテーブルわきにある月見うどんのパックのフィルムを開けた。その時、ベッドサイドの電話のベルが鳴った。

『お休みのところ申し訳ございません。フロントの佐藤と申します。宮沢恵子様というお客様がお見えになっているのですが、伊藤弘様はそちらのお部屋にご在室でしょうか』
「弘……、伊藤でしたら、演劇の練習で会議室にいると思います」
『おくつろぎのところ申し訳ございませんでした。失礼いたします』
　
　マスターにも、もう２年近くあっていないな、とわたしは思った。そして、空けかけになった月見うどんを食べようとしたが、まだ体がひどくだるかった。わたしは、月見うどんは食べずにまたベッドに横になった。

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　５名のメンバーで演劇の練習を始めた。しかし、演劇の経験者は弘だけ。地区予選までの２ヶ月、放課後をフルに使って練習に励んだが、わたしたちの演技をビデオにとって見返してもなかなか上達しているようには見えなかった。
　そこで、地区予選まで後１０日、演劇経験者のマスターに頼み込み、喫茶店を休みにしてもらい、わたしたちの通し稽古を見てもらうことにした。