「さてと、」


とりあえずは、ここを出なきゃ。


持ち上げていたトランクを地面に降ろして転がし、エスカレーターで下に降り、また歩く。




「海夏」



改札を抜けて外に出ると、あたしを呼ぶ声。


久しぶりに耳に響くその声の聞こえた方を向いて、見えたのは、




「しーくん!!!」



五つ離れた、義兄。


雨宮 沁夜《Sinya-Amamiya》



「おう海夏!
お前、綺麗になったなー」

「えへへ、しーくんはかっこよくなったねっ」




駆け寄ったあたしの頭をグリグリ撫でるしーくん。

しーくんはあたしのパパの再婚相手の子供。


あたしが小2の時に再婚して、あたしがおばあちゃん家に行ってたのが五年間だから、小5の時にはもうこの街には居なかったのかな。