「出てって…出てって…」
「美音…」
「お願いだから…出てって…これ以上、五十嵐くんを信じられなくなるのは嫌だから…」
「…」
「お願いだからっ!何で出ていかないの!?五十嵐くんが出ていかないなら私が出てく!」
「おいっ!外は大雨で…美音!」
私は裸足で大雨の中、走った。無我夢中に走った。
後ろから誰かの声が聞こえてくる。
「…お…み…美音!」
「やだっ!離して!五十嵐くんのこと何か信じられないっ!」
「友達だからなんて言って悪かった!だから俺を信じてくれ」
「どうやって人を信じろっていうの!」
またあのつらい日々が蘇る…。
「どうやって!?どんなに助けてって求めても誰の耳にも届かなかったのに…どんなに叫んでも届かなくてその辺に落ちてるのにどうやって!?」
「だったら俺が全部、拾ってやる。受け止めてやる!美音の苦しさ悲しさ切なさ。全部!」
「どうして…?どうして…こんな私なんかにそんな優しくするの…?」
「それは…好きだからだっ!さっきは素直になれなかったけど、今まで言えなかったけど…今ならはっきり言える。好きだ」
「え…」
この時、私の心の扉が開いた…。
「うん…信じる…それに私も五十嵐くんの事…好き」
私は2年前の自分のようにニッコリ笑ってみせた。
「ありがとう…ありがとう…」
「やっと本当の美音に逢えた」
その頃雨は止み、空に虹が架かっている下で私と五十嵐くんはとても優しいキスをした。