「蓄熱装置起動!」

「誘導蓄熱装置起動します」と木村が応答した。

艇内にブーンという低い音が響き、艇内に緊張感が漂った。

コパイロット(副操縦士)席のヒロキは目の前の計器パネルをじっと見つめている。夕はなんとなく不安な気分になった。

 1号艇キャプテンのジョーからスタンバイの連絡がシンジの元に入ると、シンジはミカサ長官に報告した。

「1号艇、2号艇とも準備完了です」

「よし、1号艇、2号艇ワープ開始」

ゴーッという音が周囲を震わし、青白い光を残して1号艇と2号艇がその姿を消すと、その後に再び静寂がもどった。

まもなく3号艇、4号艇のキャプテンからワープブースター準備完了の知らせがシンジのもとに入った。

「3号艇、4号艇スタンバイです」シンジがミカサ長官に報告した。

「よし、3号艇、4号艇ワープ開始」

3号艇、4号艇の順に轟音とともに青白い光を残して視界から消えた。


しばらくして、通信ミッション・スペシャリストのマイクから報告がきた。

「1号艇からの通信を受信しました。NX492に到着したそうです。ワープエネルギー蓄積完了次第2号艇とともにレオ132に向かうとのことです」

「よし、急ぐように伝えてくれ」とミカサ長官。

「はい、ただちに伝えます」

エツミと夕はハラハラしながら、やつぎばやに指示を出すミカサ長官を見ていた。

「ワープブースター、スタンバイです」木村から報告が来た。

「装置に異常はありません」
とヒロキが計器パネルを見ながらシンジに伝えた。

「よし、ワープブースター起動」

 ゴーッという音とともに司令艇全体が青白い光に包まれ、次の瞬間、窓の外の星がいっせいに白い帯となって後方に流れた。

夕は両腕でナオっちをしっかりと抱きしめている。自分の体温とナオっちのぬくもり以外、何も感じられなかった。