深い霧の中を、横になって漂っている感じがする。

「にゃーん。ペロペロペロ」

「うふ、くすぐったいよー。ナオっち」

「にゃーん、ゴロゴロ」

夕は、はっと我に返り、あたりを見回した。航宙艇のベッドの上にいたのだ。

「私、助かったのね」

ベッドの横からダイジュが心配そうに夕の顔を覗き込んでいる。

「夕さん、だいじょうぶですか?」

 夕はゆっくりと体を動かしてみた。どこも異状はないようだった。

「ええ、ありがとう。大丈夫みたい」

 透きとおったダイジュの瞳に見つめられた夕は、思わずダイジュの手を握り締めた。暖かい手の感触が夕の手に伝わってきた。

こんなにやさしくて温かい人がアンドロイドだなんて、夕の目から一粒の涙が流れ落ちた。

夕とダイジュを乗せた航宙艇は、なにごともなかったようにアノイ星を後にした。モニタ画面の中のアノイ星が、どんどん小さくなった。

「地球も、遠くから見ると、あんなふうに見えるのかしら」

夕は故郷の山や街を思い出して、つぶやいた。

 二人を乗せた航宙艇が、星雲ステイションの航法システム領域に入ると、ステイションの輸送タワーがモニタ画面の中央に映し出された。

航宙艇は、少しずつ速度をおとしながら輸送タワーの内部に滑り込んだ。