それからは、皆一言も話さなかった。

あれだけざわついていたドーム内も、
嗚咽とすすり泣く声だけになっていた。

…もう、嫌だ。

明日殺されるのは自分かもしれない。

その恐怖だけがあたしを襲う。

「では、今日の試合は終わりです。皆様、案内人に従ってお帰り下さい。」

この司会者に反抗する気力なく、あたしはアーテを呼び出した。

そして、また白い異空間に入る。

「アーテ…、なん、なの…?このゲームは…っ!!何の為にやってるの!?」

ハァ、ハァと、荒い息遣いのまま、この抑えきれない恐怖を誰かにぶつけたくて、アーテなや怒鳴りつけた。


「…人が殺されるゲームです。理由などあったとしても、許される事ではない。ですが…道香様は気付いておられるのではないのですか?」

そして、アーテは深い溜息をつく。

「このゲームは、誰かを犠牲にしなければ、生き残れないという事を。その犠牲者に、勝つ事。それは、自分が殺しているのと同じ事だと。」


…確かに気付いている、そんな事。
あたしは今日、紗陽達と戦い勝った。
そのせいで、紗陽達は死んだ。

…弱者か否かの世界だ、このゲームは。
あたしは、絶対に…


負けない。

こんな、残酷なゲームに。

…負けてはならない。